概要
2020年東京オリンピックの大会会場のひとつである「お台場海浜公園」のスイムコースにおける水質問題について取り扱うものである。
何が問題なのか?
「お台場海浜公園」に面した競技予定エリアの水質が競技開催の基準を満たしていない、また悪臭を放っている等の問題が発生している。
また、東京都の下水処理方式に起因する未処理汚水の海への放出が水質に大きく影響しているが、抜本的な対策が困難である為、安定した水質の確保や選手の衛生面について危惧されている。
お台場海浜公園の競技エリア
具体的な大会会場は、台場公園(第3台場)の側の入り江を囲む海上で競技が行われる。
東京都 お台場海浜公園における水質・水温調査結果について
1水質・水温調査内容 (5) 調査地点 より(2017年10月04日 報道発表資料)
http://archive.fo/kR4ro
実施競技
お台場海浜公園をスイムコースとして使用する競技は以下の通りである。
■オリンピック
トライアスロン、水泳(10km マラソンスイミング)
■パラリンピック
トライアスロン
水質の調査結果
東京都と東京オリンピック競技大会組織委員会(TOCOG)は2017年のオリンピック期間(7月24日~8月9日)を含む21日間、パラリンピック期間(8月25日~9月6日)のうち5日間に水質・水温調査を実施した。
その結果を以下に記す。着色は基準値を超過しNGとなった値であり、多くの項目において基準値を超過する結果となった。
■水泳(10kmマラソンスイミング)
項目 | 結果 | FINAの定める基準値 |
---|---|---|
ふん便性大腸菌群数 | 10~7,200個/100ml | 1,000個/100ml以下 |
油膜 | 8月5日、8月6日に検出 | 常時は認められない |
COD | 1.3~10.0mg/l | 8mg/l以下 |
透明度 | 0.3~3.4m | 0.5m |
水温 | 24.6~31.5℃ | 31℃以下/水深40cm |
■トライアスロン
項目 | 結果 | ITUの定める基準値 |
---|---|---|
大腸菌数 | 10~5,300個/100ml | 250個/100ml以下 |
腸球菌数 | 0~720個/100ml | 100個/100ml以下 |
pH | 7.3~9.5 | 6~9 |
水温 | 23.9~31.5℃ | 32℃未満/水深60センチメートル |
■水質検査の補足
調査を行った2017年8月は、21日間連続で降雨が確認され、1977年に次いで、観測史上歴代2位の連続降水記録となっており、 上記の調査結果は晴天時と降雨の後の水質が顕著に異なっている、と述べている。
テスト大会での評価
■2019年8月11日に水泳オープンウォーターのテスト大会が開催された。
・猛暑の影響で10時開始予定を7時に前倒し
・本番の半分の距離となる5kmのコース
にて実施をしたが、多くの選手から悪臭と高水温に対する悲鳴が上がった。
■2019月17日のテスト大会を兼ねたパラトライアスロンのワールドカップが開催された。
しかし、水質が悪化したため中止となった。調査は前日の16日午後1時に行われ、大腸菌の数がITUが定める上限の二倍を超え、四段階のITUの分類で最も悪い「レベル4」だった。
水質が悪い原因
東京都の約8割の地域の下水処理方式は、トイレや風呂、台所といった家庭や工場などの汚水と雨水を一緒の下水道管で集め、下水処理場に運び込む「合流式」が採用されている。
産経新聞社 8月23日記事「トイレ、風呂、台所の汚水流入、お台場の水質「最悪」 五輪テスト中止で波紋 」より
http://archive.fo/GidNp
この「合流式」は、通常時であれば、下水処理場に運び込まれた汚水と雨水の下水はすべて処理されて川や海に放流される。しかし、台風などで大雨が降ると処理能力が限界を超え、汚水が雨水とともに未処理のまま川や海に放流される。
このため、気象条件によっては大幅に水質が悪化するため安定した水質を確保することが出来ない状況である。
また、「開催中の暑さ問題」の通り、開催時期は猛暑が予想され、水質に大きく影響を与える水温を抑えることも大きな問題となっている。
その対策
・3重スクリーンの設置
・競技の開催時間を5時に検討